「さん、私の夢、好き?」
 「大好き。夢中になるほど好き」

 「私も自分の夢が好きと言ったら、さんどう思う?」
 「多分、もっとあなたの夢が好きになる」

 「さんは、自分の夢、好き?――」

■act.7

イラスト・柊のぞむ様

 コンコン……

 ドアが軽くノックされた。
 私が返事をすると、ドアがゆっくり開く。

 「迎えに来たよ、お姫様」

 そう言って王子様は上品に笑った。

 「今日は特別綺麗だ、」

 蔵馬は私のウエストを引き寄せ、額に軽くキスをした。

 「このまま誰も知らないところにさらっていきたいくらいです」

 「そうはいかない……」「……でしょう? 蔵馬さん」

 私の言葉を隣の部屋にいた人が継ぐ。
 蔵馬は苦々しく笑って頷いた。

 「まったく気が利かない人だなぁ」

 「冗談。正義の味方でしょう。
  このまんまじゃ裏ページ設立街道まっしぐら」

 さんはぐりぐりと首を回しながらドアを開く。

 「さあてさん、今日の修行の成果、ばっちり発表してね」

 階段を降りると、フロアにはさっきのように華やかで賑わった気配がする。
 さっきと違うのは、ちゃんとそれらの気配に音が伴っていること。
 そして私はひとりぼっちで迷い込んだわけではないということ。

 「今日は何の企画?」

 蔵馬の腕につかまったまま、私は隣のさんを振り向く。

 「それは開けてのお楽しみ」

 彼女は含み笑いをしながら腕時計を見る。

 「よっしゃ時間ですぜ。蔵馬、エスコートよろしくぅ」

 さんがドアに手を掛ける。

 「待って!」

 私は慌ててそれを止める。

 「どうしたの? トイレ?」
 「……まったくデリカシーのない……」

 ため息をつく蔵馬の腕に自分の腕を絡めたまま、私はさんの腕をつかんだ。

 「さんも一緒にエスコートして!」
 「ぅえええ?」
 「……いいんじゃないですか? 立派な引き立て役になれますよ」

 蔵馬に促され、さんは渋々私に曲げた腕を差し出した。

 「行こう」

 蔵馬とさんがドアを同時に押し開ける。

 瞬間、眩しい光と、華やかな色と、弾けるような歓声が私たちを迎えた。

 エスコートのふたりは、迷わず私を中央のテーブルに誘導する。
 糊のきいた真っ白なクロスにぴかぴかに磨かれたシルバー。
 華やかに咲き乱れるお花に、湯気を立てるたくさんのお料理。
 その中央には、大きなケーキがドンと置かれていた。
 色とりどりのフルーツで飾られたそのケーキには、キャンドルがストンストンと立っている。

 「さあ、」

 蔵馬が囁いて私をテーブルに近づける。

 「あ……」

 ”HAPPY BIRTHDAY * !!”

 そこに書かれていたデコレーションに、私はハッとして顔を上げる。

 「?」

 恐る恐る声を掛けてきた蔵馬を振り返って、私は思わず大きな声を出す。

 「今日私、誕生日だ! 忘れてた!」

 会場は一瞬シンとなり、次の瞬間ものすごい数のため息が轟いた。
 ……はっきり言って、こんな盛大なため息聞いたことがない。
 私は思わず自分の言ったことなど忘れてさんを振り返った。

 「ここ、普通笑うところですよね!?
  今つくづくさん家にいるって実感しました! すごいです!」

 「そ、そう? あ……ありがと」

 蔵馬がそっと手を引いて前を向かせる。

 「さ、、どうぞ」

 私は息を思いっきり吸い込んだ。

 「あ、もしかして……」

 拍手しようと待ち構えていた皆がガクリと脱力する。

 「時間の問題でバレそうだった、私に秘密にしていたことってこれだったんですか?」
 「……どっかで聞いた台詞」

 さんが首を傾げ、蔵馬は気まずそうに顔を背ける。

 「なるほど、どうも様子がおかしいと思ったらそういうこと」

 静流さんが呟き、桑原君が振り返った。

 「あ? そういうことってどういうことだ?」

 「には秘密にしよう、黙っておこうという主語のない男と女の打ち合わせを聞かれていた……
  そうよね、ちゃん」

 さんが青ざめる。

 「お前らのことだ。
  そりゃまた何とも意味深な台詞を並べ立てていたのだろうな」

 コエンマさんがにやにやと笑う。

 「だから私、てっきり蔵馬とさんって裏では恋人同士なんだって思っちゃっ……」

 ひとしきりの轟音がやんで、私は再びさんを見た。

 「……すごいです。
  管理人とメインキャラに恋人疑惑が掛かってここまで爆笑されるの初めて見ました」

 「……ごめん、私も笑った」
 「……オレもです」

 やっぱりさん家だここ。
 呆れて眺めていると、幽助が疲れたように睨む。

 「何でもいいから早く消せ。ロウソク無くなんぞ」

 私は今度こそ大きく息を吸い、キャンドルに勢いよく吹きかけた。

 「、おめでと!」
 「あれ、? 来てくれたの?」

 はニコッと笑って会場を振り返った。

 「あんたがこのサイトで会った人、全員来てるよ!」

 言われて私は改めて会場を見渡す。

 「……さん……」
 「皆さんにおめでとうって言いたいって、聞き分けなくて」

 私はさっきから視界をチラチラしていた怪しげな人たちを目で追う。

 「全員って、本気の全員ですか?」
 「うん! コウモリからタヌキまで~」
 「ヤバい人もいます?」
 「はい~。一番ヤバいの蔵馬です~」

 私の隣のオーラが黒ずむ。

 「えっと、そうじゃなくて……例えばあの人たち……」

 私は黒子の衣裳を着た、あからさまに怪しい5人組を指した。

 「裏の住人も完備です~」

 捨て身のお祝い、ありがとう……。

 「あ、おめでとうございます」
 「えっと、ありがとうございます……?」
 「一度お会いしましたよね。連載で犬の散歩をしていたマユミです」

 ……さん、レアすぎますいくらなんでも……

 「え、そう?」

 さんはせっせとお料理を取りながら振り返った。

 「はい。幽助と螢子ちゃんの愛の合作だから、きっちり食べてね」
 「そうなんだ!?」

 お皿を受け取った私の隣で、さんはテーブルにもたれかかった。

 「さっき、最後の質問では詰まっちゃったけどね」

 私は目を上げて彼女を見る。

 「私は私の作った夢を好きだって言ってくれるさんが好き。
  大好きなさんとめぐり合わせてくれた夢を作れたことは素直に嬉しい。
  ……と、今はそんなところかな。
  いつか即答で好きって言えるようになったらいいと思います。……以上!」

 さんが敬礼したので、私もつられて敬礼する。
 蔵馬は苦笑しながら私の手を引いた。

 「おいで。記念撮影だって」

 壇に登ったみんなが、笑顔で私を待っている。
 真ん中にぽっかり空いたスペース。
 あそこが蔵馬と私の場所。

 さん、いつまでも私にこの場所を用意しておいてね。

BACK
Birthday Princess


柊のぞむさんのお誕生日をお祝いして。
そんで結局彼女のお誕生日をはみ出してしまいました。
開き直ってact.7は私自身の今までの反省と今後の誓いになりました。年末ですし。
のぞむさん、君の記念日に誓うよ。

のぞむさんに頂いたイラストや小説の数くらい書きたかったのですが追いつきませんでした;
それだけいっぱいいっぱい愛をもらい続けました。のぞむさん、本当にありがとう。

今回は蔵馬さんと我慢対決しながら頑張ってみました。
ちょっとは三角関係っぽく見えた?? どきどき。

hide-and-seek princess
かくれんぼう おひめさま
かくれんぼう しょうぐ……
わーのぞむさんおめでとう~!!

20061230