■14:29 会場
「おい! おめーら!」
だんだんと華やかな雰囲気になってきた会場に、幽助の大声が響く。
「なんだいなんだい、騒がしいねぇ」
「来なかったか!?」
「何度か蔵馬さんを探して飛び込んできましたが……?」
螢子がぶんぶんと首を振る。
「その後! しばらく姿を見せなかったでしょ?」
「そーだっけかなぁ。こっちも忙しくて気にしてなかったぜ」
珍しく焦った様子の蔵馬が、書置きを見せながら状況を説明した。
「こっちもに覗かれるのを用心してカーテンを閉め切っておったからのう」
「……あのさ、まさかとは思うけどさ……」
ぼたんが青ざめた顔で口を開いた。
「ついさっき桑ちゃん、寒気がする、寒気がするって騒いでなかったかい?」
「う……そういやあ……カーテン越しに不気味な気配がして……」
「さん、霊になっちゃった!?」
螢子が高い声で叫ぶ。
その脇ではコエンマとぼたんが必死で閻魔帳を繰っていた。
「知りませんでした……さん……蔵馬さんのことそんなに……」
雪菜の目にたまった涙に、蔵馬は冷や汗を拭った。
「いや、死んではおらん」
コエンマの呟きで、その場に漂ったにわかな緊張が解けた。
「しかし、衝動的な自殺は閻魔帳に載らんこともあるからな。
一度霊界に戻って調べてみるか。
ぼたん、お前はここに残れ」
コエンマは出口で足を止めた。
「だがな、もしそんな事態になっていても、連れ戻すことはできんぞ」
ドアの音がしたきり、会場は沈黙に包まれた。
「……大丈夫だって。だぜ? そんなシリアスな死に方するわけねーだろ?」
「……確かに」
幽助の明るい声に、戸惑いながらも全員の声が揃った。
「あの人のことだ、ケーキでも買いに行っているんでしょう。
小説も人生も辻褄あわせが信条だとか行ってたし。
邪魔をしてすみませんでした。オレもそろそろ準備に戻ります」
蔵馬は息をつくと、そう微笑んだ。
「そうだな。オレたちも最後の仕上げだ。
行くぞ、螢子」
3人を見送って、桑原は唸りながら腕を組んだ。
「……うまいことコエンマに逃げられたな」
くぅぅ、とぼたんが悔しそうにうめく。
「ま、オレたちもとっとと終わらせちまおうぜ。
手が空いたら皆で探したらいいや」
■14:41 キッチン
一度別間に入った蔵馬が裏口から飛び出して行くのを、幽助と螢子はそっと見守っていた。
「まさかとは思うけどよ、もしがのところに化けて出たらしゃれにならねぇ」
「縁起でもない……」
螢子が眉をひそめる。
「ばーか、万が一だよ。オレちょっくらの様子見てくら」
20061230