Let's Make Up !

  突然渡された銀細工の凝った小さな入れ物。
  なんだろう、と開けると中には紅が入っていた。
 「もらっていいの?」
 「他の女にやっていいのか?」
 「それはいや! ありがとう蔵馬」
  うれしくては思わず抱きついた。
  蔵馬が紅をくれた、ということは化粧してもいい、ということと、大人と認めてくれたことだ。
  何重にもうれしくてはすっかり舞い上がっていた。
 「さっそく塗っちゃおー」
  小指に紅を付けてそっと唇をなぞると鮮やかな赤がの唇を彩る。
  もう一度小指に紅を付けようとすると、蔵馬が紅を取り上げた。
 「蔵馬、返してよ」
  やっぱりまだ化粧は早い、と言うのだろうか。
  小さく蔵馬を睨むと予想外の言葉が返ってきた。
 「オレが塗ってやろう」
 「え?」
  は聞き間違い、と思った。けど今確かに蔵馬は塗ってやろう、と言った。
  驚くをよそに蔵馬は指に紅を付けている。
  どうやら本当に蔵馬が塗ってくれるようだ。
 「お願いします」
  とは目を閉じた。
  蔵馬に塗ってもらえるなんてそれだけでもドキドキしてしまう。
  目を閉じれば少しは緊張しなくてすむ。
  そう思い待つがいつまでたっても唇に蔵馬の指が触れる気配がない。
  またからかわれた? とは目を開けるととんでもないものを目にした。
 「くっ蔵馬!?」
  なんとそこには紅を塗った蔵馬がいるではないか。
  蔵馬お化粧したかったの? それより、とは蔵馬を見た。
  蔵馬が紅をつけるだけで美しさが増す。
  それは美しさというより妖しい魅力が増したような…
  思わず見とれていると蔵馬の手がの後頭部に回された。
  なに、と思う間もなく蔵馬は唇を重ねた。
  いきなりの口付けには目を閉じることも忘れた。
  紅を塗ってくれる、と言ったのになんでこんな事になったのか。
  混乱しながら蔵馬を押しのけようとするが、しっかりと固定されて逃れられない。
  触れ合うだけの口付けだがたっぷり長い時間をかけられ、ようやく唇が離れた。
 「なっなっ……」
  は顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせるが、反対に蔵馬は涼やかな顔で自分 の唇の紅を落としていた。
 「どうした、」
 「だだだって、くらま、べに」
  紅を塗ってくれるんじゃなかったの? と言いたいが動揺してうまくしゃべれない。
  蔵馬はそんなの言いたいことはわかっていた。
 「ちゃんと塗ったろう」
 「塗ってな…ってまさか」
  は思わず鏡を見た。
  そこには真っ赤な顔をした自分が映されているが、唇にはちゃんと紅が付いている。
 「普通に塗ってよ……」
  は思わずうなだれた。
  そう。蔵馬はちゃんと紅を付けてくれた。
  ただしその方法が口移しだったのである。
 「いやだったか?」
 「いやとかその」
 「じゃなんだ」
 「だってムラがあるし、唇からはみ出てるし、第一心臓に悪いし……」
  はブツブツと文句を言うが、本当に怒っているわけではない。
  ただの側仕えからやっと恋人に昇格できたには刺激的過ぎる。
  それに紅を塗った蔵馬は妖しさが増して美しかった。
  とても蔵馬に言えないが、女として負けたような気がして自信をなくす。
  もし化粧をするたび口移しで紅を塗られたら……それはやばい。かなりやばい。
 「とにかく紅は」
  自分で塗るから、とが言いかけるとなんの前触れもなく黄泉が入ってきた。
 「おい蔵馬。今度の」
  そこまで言うと黄泉は言葉を切った。蔵馬の唇が妙に赤い。
  蔵馬から視線を移すと顔を真っ赤にして紅の乱れたがいる。
  再び視線を蔵馬に戻すと黄泉は一言、邪魔した、と言って扉を閉めた。
 「あれ。黄泉は蔵馬に用があったんじゃないの?」
  なんで出てっちゃたんだろう、とは首を傾げた。
 「気を使ったようだ」
  なにそれ、と聞く間もなくは蔵馬に抱き上げられた。
 「当分誰も来ないだろうから、遠慮はいらんな」
 「遠慮? なんのこと?」
  きょとん、とするに蔵馬はケチの付けようのない笑みを見せた。
 「は紅の似合う大人になったのだからな」
 「えっえっ?」
  状況を掴めないままは寝室へと運ばれた。
  やっと蔵馬から化粧してもいい、と言われただがしばらく化粧をしなかった。
  紅を見るとついつい思い出してしまうから……

このお話の南野君バージョン
『Let's Make Up!! / Part2』
ちゃんと妖狐蔵馬の最初のお話
『大人になりたい!』


 前回、『大人になりたい!』を頂戴しました葉葛さまにワガママを申し上げ、またまた妖狐蔵馬夢を頂いてしまいました♪
 だってだって、とってもステキだったんです(>_<)
 今回は恋人に昇格してるんですよっ!
 蔵馬ったら、しっかりしてるんだからっ。もう。

 葉葛さまとのメールの遣り取りのなか、たまたまお化粧の話題になり、ななななんと、そこからこんなにキュートでコケティッシュなお話が誕生しちゃったそうです。さすがっ!
 蔵馬の口づけ(?)や、紅をさした姿はもとより、フェチ入り気味の美馬には”指で自分のくちびるに紅をひく”姿にムラム……いやあの、ドキドキしてしまいます。
 南野君では決して見られない姿ですねぇ……ヤなことあったらしいですから。ねえ、桑ちゃん。

 葉葛さま、ステキなお話、本当にどうもありがとうございました。
 そして、『大人になりたい!』の感想を送ってくださった皆様、葉葛さまにはメールでお伝えしてあります。どうもありがとうございました。
 今回のお話も応援してあげてくださいね♪

20051215葉葛様