※『男性芸能人』欄の名前がペットの猫の名前に反映されます

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 「……誕生日プレゼントは”黒蔵馬一年ぶん”って……縁起でもない……」

 BBSを眺めて、は深くため息をついた。

 いいえ、わかってる。わかってるの。
 さんは本気で私が喜ぶと思っているか、本気で私がウケると思っているかのどちらかだってこと。
 少なくともそれなりにあれこれ考えてくれはしたのよ、きっと。
 でもね、さん。言葉には言霊が宿るのよ。
 新しい歳を迎える記念すべき今日という日に、そんな不吉な言葉はやめて欲しいわ。

 さんの相手も楽じゃないわね……呟きながら、擦り寄ってくる愛猫・を抱き上げる。

 「んー、いい子いい子。
  たん、いざとなったらいっぱいアレルゲン物質を出して、をさんの毒牙から守ってね~」

 生後間もない仔猫の柔らかな毛が頬をくすぐる。
 が目を細めてあやしていると、突然、背後から涼しげな声が掛かった。

 「それは、にはちょっと荷が重いかな」

 は反射的に絹を裂くような悲鳴を上げて立ち上がった。
 腕を抜け出したは、よほど驚いたのか、一瞬のうちに本棚の上に飛び乗って毛を逆立てている。

 「あれ、驚かせちゃいました?」

 つややかな長い髪をさらりと揺らして、「彼」は平然と微笑んだ。
 がその奥にのしたり顔を見たことは言うまでもない。

 「く……蔵馬、どうしてここに?」
 「どうしてって、素直じゃないな、。
  本当は待っていてくれたんでしょう?」

 蔵馬はからかうような微笑みを浮かべながら、の頬を指先で撫でた。

 「いやあのちょっと待っ……あの、あれ冗談では……?」
 「わかってないな、」

 蔵馬はそっと手を放すと、ゆっくりと本棚に近付いて仔猫を助け下ろした。
 そのまま腕に抱いて、喉元を撫でてやりながら振り返る。

 「あなたへの想いに、冗談も嘘もありませんよ」

 その瞳が甘く輝く。誘うように、酔わせるように。
 ぐらりと眩暈を感じながらも、は身体の底から聞こえてくる警報サイレンで踏みとどまった。

 「だ、だって言い出したのさん……」
 「ああ、あの人は存在が冗談だから、言うことは全部本気です」

 ……それは結局冗談ってことなんじゃ……?
 は額を押さえながら眉間を寄せた。

 そんなを見てクスリと笑うと、蔵馬は目を伏せて腕の中のの背をゆっくりと撫でる。
 窓から差し込む柔らかな日差しが彼の端正な横顔を照らし、優しい影を作った。

 さん……多分私すごい非常事態だと思うんだけど……。
 はゆっくりと顔を覆っていた手を下ろす。

 ――この部屋、こんなに天井低かったっけ。

 見慣れた部屋なのに、彼がいるだけで全然知らない場所のような気がする。
 窓から差し込む夕陽も、カーテンを揺らす優しい風も、今さらながらに結構素敵だったかな、なんて。

 こうして見ると、すごく背が高いんだ……蔵馬。
 こんな、女の子みたいに綺麗な顔立ちなのに、肩幅もあんなに……
 何だか部屋が狭く感じる……

 蔵馬が小さく微笑んで顔を上げた。

 「眠っちゃったね」

 声に反応するように、はひとつ瞬きをして改めて蔵馬を見る。
 は小さな身体を気持ち良さそうに彼の腕にあずけ、目を閉じている。

 蔵馬はそっとクッションの上に仔猫を下ろすと、なおもその背を撫でながら、視線をに向けた。

 「迷惑でしたか?」

 はびくっとして、慌ててかぶりを振る。

 「ち、違っ! ただ、あの……ちょっとびっくりして……」

 頬を真っ赤に染めるを黙って見上げ、蔵馬はゆっくりと彼女の前に戻った。

 は真っ直ぐに彼を見られずに、少しだけ下を向く。
 が、すぐにその顎を蔵馬の指がすくいあげ、上を向かされた。

 「あの、だから……蔵馬に会えて……嬉しい……」

 蚊の鳴くような細い声に、蔵馬の口元がふっと緩む。
 その唇はゆっくりと動き、にとっては聞き慣れていたはずの、なのに泣きたくなるほど甘い声が耳に滑り込んだ。

 「、誕生日おめでとう」

 ゆっくりと、ゆっくりとふたりの影が近付き、静かに重なる。

 「君のそばにいてもいい?」

 言葉が紡がれる度に唇が触れ、頷くとまた触れる。
 1ミリにも満たないと思われる距離の先で、蔵馬は意味ありげに微笑む。

 「睡眠不足になるよ?」

 カアッと赤くなるの唇がまたふさがれる。

 すっかり自分の力で立てなくなってしまったのウエストを強く抱きしめ、蔵馬はまた睫毛の触れ合う距離で妖艶に笑った。

 「は睡眠過剰になるだろうね」

 そうして再び唇を奪われながら、ははたと目を見開いた。

 「え……?」

 が思い当たったであろうことを承知した様子で、蔵馬はもう一度、悪戯っぽい視線をに流す。

 「っ……っ!?」

 は慌てて気持ち良さそうに眠る愛猫のところに駆け寄った。

 「ねねねっ、眠ちゃったって……眠らせ……?」

 真っ青になるの背後から腕が回り、その耳にあたたかい息が掛かる。

 「大丈夫、寝る子は育つっていうでしょう?
  うまくしたら一年で虎になれるかも」

 「ちょっと待って蔵馬さんっ!!」

 振り向いた先では相変わらずの天使の微笑み。
 くらりと眩暈を感じたの脳裏を、BBSの管理人レスがよぎる。

 『プレゼントは黒蔵馬一年ぶん!!』

 さんっ! 返品ききますかーっ!?

 ……とも、この状況では叫べず、はひたすらに楽しかった出来事を走馬灯のように眺めていたという。



 だけどこれ一日目ですから頑張ってねさん!


こちらは日記内でアップした短編のリライトです。
桂木ひびきさんから頂いたお誕生日プレゼントの美麗イラストをアップしたその日が
なんとなんと、ひびきさんのお誕生日だったのです♪
見るたびうっとりしてしまう素敵なイラストをいつも頂いているひびきさんに
こんな日くらい何かお礼を! ……と思ったんですが、なぜか嫌がらせに。
ひびきさん、365分のいくつまで耐えられたんだろうか。
でででもっ! 蔵馬も私も愛はあるのっ! 本当ですっ!!

20061113