ぴんくらまさんが話せない話

「……あら、だめですわ、ぴんくらまさま。そんな風に見つめられたら、わたくし身体が火照ってしまいます」
「見られるだけで? それじゃ困るな。何もできない」
「ぴんくらまさん、ナニって何ですか??」
「そうだな、例えば」
 窓際に誰かを押し付けるように立っていたオレは、あからさまに煽って面白がっている声にニヤリと笑うと、指を伸ばして目の前の彼女の喉元を撫で上げるように仰向かせる。
「これは13禁には引っ掛からないでしょう」

 彼女の方も負けてはいない。
 少しだけ唇を舐めて濡らすと、誘うように甘い微笑みを浮かべる。
「あら、キスだけで終われるほど、わたくし魅力がないのかしら」
「そうだそうだ! ぴんくらま、女に恥をかかせる気か! 【ピ―!】!」
「悲しいですわ……わたくし【ピ――――――!】ますのに……」
「へえ、それは確かめてみたいですね。本当に【ピ――――――!】か」

 唖然として彼らの会話を見守るオレたちの前で、話を18禁方面に誘導していた張本人がビシッと敬礼の体勢を取った。
「少なくとも【ピ―!】と【ピ―!】と【ピ―!】と【ピ――――――!】が海藤倫に引っ掛かることは確かめられました隊長!」
「まあ、こんな言葉も使えませんの? そうすると【ピ――――!】も【ピ――!】も……あら、ダメですわね」
「【ピ――!】っ!【ピ――――!】っ!【ピ―!】っ!【ピ――!】っ! うーん、なかなか厳しいですね、海藤倫」

 確かに、そんな言葉まで規制する必要があるのだろうかと思ったところで、ピンクの前にいた彼女もため息をつく。
「13禁ですものね……」
 そうか、18禁ではなく13禁だった。
 確かにそれはかなり厳しくなるかもしれない。
「【ピ――!】っ! 【ピ――!】っ! 【ピ――!】っ! あーっ、もう!! 若菜さーん、海藤君壊していいですか!?」
「ログ編集めんどいからダメー」
 白のオレの陰からにょきりと美馬さんの顔がのぞく。

 ”点”は眉根を寄せて海藤に視線を戻す。
「なんなんですか、あれは」
「深夜でいちいち注意するのが追い付かなくなってきたから領域を張ったんだよ。青少年の心身・道徳観などに悪影響を及ぼすような【ピ―!】的、【ピ―!】的、【ピ―!】的、及び【ピ―――!】表現にはピー音がかぶさる」
「いや……海藤、すでにまともに話せていないんだが……」
 思わず口を挟むと、彼は自慢げに頷いた。

「だから、あの一角にだけ領域を張ったんだ。オレは領域からは出られないからまともに話せないけど、あそこの人達以外は普通に会話できる。君が若菜さんを使わずに話を展開させられるわけがないからね」
「……それはどうもご親切に」

 ニヤッと笑う海藤に、再び”点”が苛立たしく吐き捨てる。
「それはともかく、もう少し静かな音にできないんですか」
「かぶせ音が小さかったら隠したい音が丸聴こえだろ?」
 それはそうだ。




20251228